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「……この悠久とも言える時の流れの中で、何度も夢見たこと……」
青い水晶の森に、鈴のように透き通った、凛とした声が響き渡る。
「……ねぇ?ラベラズリ」
「……そうよな。望んだ……、いや、出来ればこんな時は来て欲しくはなかった……」
水晶の森から現れたのは、白いあご髭を撫でるラベラズリ。
彼の視線の先――それは美しい泉に浮かぶ小さな孤島。
そこに、白いワンピースを着た女が、真っ青な髪を揺らしながら星空を眺めていた。
「気分はどうかの?」
「悪くはないわ。ただ、まだまだダメね。力が出ないもの」
女が振り返る。その清楚な顔立ちを困ったように変化させ、両手に力を込めてみる。
「なに、時を待とう。あの子達ならば、大丈夫じゃよ」
ラベラズリは笑う。
「さぁ、家に招待しましょうかの」
そう言ってラベラズリは踵を返した。
女はラベラズリを追いかけるように、その一歩を泉へと踏み出す。
しかし、その白く細い足が水に沈むことはなく、波紋を広げ、ゆっくりと水面を歩いていく。
「信じているわ。可愛い可愛い希望達。
貴方達の輝きはまだまだ闇の中では小さいけれど……、大丈夫。
世界は、いつだって輝いているもの」
女は笑った。
この世の全てを愛する笑顔で。
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