‐国壊‐

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「貴様……!どういうつもりだ!」 フィアリアが地の底から発したような低い声を上げる。 サテラは痺れも治まり、フィアリアの隣で、同じく怒りを露にしながら臨戦体勢。 「どういうつもりとは、見てわからないか。姫を連れ去ろうとしているのだ。あと、そこの赤髪。下手に動けば、今すぐ姫を殺す。無論、お前達も動くなよ」 雷王と睨み合っていたレクサスは、舌打ちを一つ打つと剣を納めた。 体の所々に焦げた後が目立つが、どれも致命傷には至っていないようだ。 一方、雷王も似たような状態で、姫を担ぎ首元にナイフを突き付ける鎧の隣へ移動する。 唯一違うとすれば、肩口を大きく切り裂かれた後があることか。 姫を担ぐその鎧は、全身が青かった。 「もーう、遅いじゃないの。あの子すんごく強いから、死んじゃいそうだったじゃないのよぅ」 「俺にも準備というものがある。今頃は、俺の部下達が民を全て逃がし切った頃だろう。これで十分に動ける」 「おい貴様!」 二人の会話に割り込むのはフィアリアの怒声。 相手を射殺さんとするほどに、睨みつけている。 「国を守る組織のトップでありながら、一体何をしているのかと、私は聞いたんだ!」 そう、姫を担ぐ男は、姫の警備を任せたラプラタガーディアン総隊長兼清流帝のラルゴだった。
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