‐清流の国‐

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「起きろ!朝だぞ!」 薄暗い部屋の中。カーテンの隙間から、うっすらとした光が差し込むその部屋に、そこの気だるい雰囲気には不釣り合いな程ハキハキとした声が響いた。 「…………」 しかし、その声に応えるものはない。 「ほう……、毎朝毎朝懲りない奴だな……。待っていろ。すぐに目を覚まさしてやる」 そう言うと、声の主はベッドに潜ったまま微動だにしない寝坊助の頬をつまんだ。 むにむにむにむに。 しばらく、その感触を楽しむ。 「……はっ!私としたことが、目的をすっかり忘れていた!」 頭をぶんぶんと振ってその煩悩を発散させた後、今度はしっかりと頬を握った。 「そりゃ!」 「……っ!?」 そして、そのまま頬をひきちぎる勢いで引っ張った。 何かが千切れるような音と共に、寝坊助はベッドから跳ね起きた。 引っ張られた頬をしきりにさすっている。 そして、すでにカーテンを開けようとしている人物に声をかけた。 「……おはよう、フィアリア」 女は、朝日にその銀髪を煌めかせながら、満面の笑みを浮かべた。 「おはよう。レクサス」 .
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