Fool who has power

2/19
前へ
/19ページ
次へ
「あーあ、相変わらず何にも起きないね……」 駅前のハンバーガーショップで退屈そうに窓を見ながら有紀は言った。 溜め息を吐いてはフライドポテトを口に入れ、小汚ない音を立てながらコーラを飲む彼女の姿は、僕が描く女子とはとてもかけ離れている。 「平和なんだからいいじゃない」 物騒なことを言う人だな――と思いながら、僕は苦笑いした。 「うーん。そりゃそうだけどさぁ、せっかく魔法が使えるのに何にもできないのって皮肉じゃない?」 「まぁ、何かモヤモヤするのは認めるけど……」 僕が賛同すると有紀は急に嬉しそうな顔をしてテーブルを叩いた。 「でしょでしょ? こういうのって魔王がいたり、地球が危機だったりするから成り立つのよ。平和じゃ意味ないのよねー」 一人でしゃべって一人で納得した有紀は、大口を開けてハンバーガーにかぶりつく。 きっと彼女はキリスト教徒にはなれないだろう。 「あっ!? こっちこっちー」 急に席を立ち、有紀は誰かに手を振った。 レジに並ぶ二人組――聖子ちゃんと那賀さんだ。 聖子ちゃんは有紀に気付いてニコリと微笑み、小さく手を振る。 「ちょ、ちょっとやめなよ。恥ずかしいよ」 「え、そう?」 有紀は変なの、と言いたげな顔をしておとなしく座った。 天然キャラというのは大抵自己嫌悪に走る傾向があるけど、彼女は違う。 自分が天然だということに全く気付いてないのだ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加