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「あーあ、相変わらず何にも起きないね……」
駅前のハンバーガーショップで退屈そうに窓を見ながら有紀は言った。
溜め息を吐いてはフライドポテトを口に入れ、小汚ない音を立てながらコーラを飲む彼女の姿は、僕が描く女子とはとてもかけ離れている。
「平和なんだからいいじゃない」
物騒なことを言う人だな――と思いながら、僕は苦笑いした。
「うーん。そりゃそうだけどさぁ、せっかく魔法が使えるのに何にもできないのって皮肉じゃない?」
「まぁ、何かモヤモヤするのは認めるけど……」
僕が賛同すると有紀は急に嬉しそうな顔をしてテーブルを叩いた。
「でしょでしょ? こういうのって魔王がいたり、地球が危機だったりするから成り立つのよ。平和じゃ意味ないのよねー」
一人でしゃべって一人で納得した有紀は、大口を開けてハンバーガーにかぶりつく。
きっと彼女はキリスト教徒にはなれないだろう。
「あっ!? こっちこっちー」
急に席を立ち、有紀は誰かに手を振った。
レジに並ぶ二人組――聖子ちゃんと那賀さんだ。
聖子ちゃんは有紀に気付いてニコリと微笑み、小さく手を振る。
「ちょ、ちょっとやめなよ。恥ずかしいよ」
「え、そう?」
有紀は変なの、と言いたげな顔をしておとなしく座った。
天然キャラというのは大抵自己嫌悪に走る傾向があるけど、彼女は違う。
自分が天然だということに全く気付いてないのだ。
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