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「…ぁふ、……ねみぃ……」
小鳥囀る早朝に、学生服に身を包んだ少年は一つ大きな欠伸をしながら歩いて行く。
向かう先は少年の通う高校。
人気の疎らな早朝の通学路には、同じ制服を着ている者は見当たらない。
それもそのはず、現在の時刻は午前6時。
部活の朝練だってこんなに早く始まらないのだ。
それなのに、彼がこの早朝に学校へ向かう訳は――
「あ~の、くそじじぃ……朝っぱらから叩き起こしやがって…何が修業だ、やってられるか」
……と、修業と称して祖父にしごかれていたためであった。
少年の肩には通学バッグとともに藍色の細長い包みが担がれていた。
その長さは1メートル程だろうか。上部より約30センチ下に僅かに膨らみがあり、そこに引っ掛けるように紐がくくりつけられ、更に下部先端5センチの所にも同じく紐の片方が結ばれている。
その紐を少年は右肩から左脇に襷掛けしていた。
一見すれば中身は木刀か竹刀か、察しの良い者ならば少年は剣道部員なのだと思うだろう。
けれどそれは正解であって正解ではない。
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