#0 ぷろろーぐ

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なぜなら少年の持つ包みの中身は、模擬刀――日本刀のレプリカなのである。 少年の家は居合道の道場であり、祖父はその師範なのだ。 もちろん少年も幼い頃から手ほどきを受けてきている。 今日も今日とて祖父に日もまだ昇らぬ時刻に叩き起こされ、筋トレから素振り、型の応酬と強制的にやらされてはいかに元気有り余る年頃の少年でも、朝から疲れたサラリーマンのようなけだるさを漂わせざるをえない。 はぁ…と溜め息をこぼしつつも、姿勢も足取りにも乱れは出ないあたり、身についた習性とでもいうのだろうか。 だてに十年も鬼のようなしごきに耐えてないだけでもあるが。 そうこうしているうちに気が付けば校門の前に着いていた。 ふっ、と校舎の壁上部に備え付けられている時計に目をやれば、案の定始業の二時間も前で、果たして生徒玄関が開いているかもあやしい。 校庭には、「今年こそはっ!」と甲子園出場に燃えている野球部の部員がちらほら見えているが、それ以外に生徒は見当たらない。
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