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自分の指先さえ見えない漆黒の闇の中。
少年・志度剣悟を引っ張る引力は、既に頭部どころか体中に纏わり付き、ぐいぐいと何処かもわからぬ所へと導いていく。
それはふわりとした浮遊感を感じるようなものではなく、す巻き状態でジェットコースターに乗っている感覚で。
……とにかく猛烈な吐き気に襲われていた。
「ぅ…ぐ、ぇ……」
時々腸が捩れるような、関節をあらぬほうへ捻るような、不快さと痛みも感じてはいたが、自分を引っ張る引力に弾き飛ばされたかのごとく一瞬で掻き消えていく。
そんな最悪の時間が二十秒程も続いただろうか。
「…っあ?」
進行方向にまばゆい光が拡がったかと思うと、それまで纏わり付いていた引力も薄れ今度こそふわりとした浮遊感を感じたのもつかの間。
直後に襲ったのは、重力という名の災難。
そして、
「うべらっ!?」
地面とのディープキス。
幸いなのは地面が柔らかい土だったために、ひどい怪我は免れたこと。
重力を感じてから地面までの距離が短かったのも運が良かった。
だが、顔面から突っ込んだ衝撃は大きい。――精神的にも。
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