4人が本棚に入れています
本棚に追加
地面と熱烈な抱擁を交わして、ぴくぴくと痙攣すること約十秒。
衝撃から復活したか、勢い良く上体を起こしたかと思うとそのまま地面に四つん這いになり、
「ぅ…ぉうぇええぇえ」
吐いた。
どうやら暗闇の中で生じた吐き気に、地面と顔面衝突したときに口に入った土の味がトドメとなったらしい。
ひとしきりむせこんで多少楽になった剣悟は、右手で口許を拭うとまだ幾分色の悪い顔を上げ辺りを見回した。
そして体も思考も固まった。
(……???)
視界に飛び込んできたのはどこまでも高い、けれど不思議と紫がかった空と、背後までは見ていないが四方を囲む深緑の森。
手の平の下には温かみのある土と、疎らに茂った雑草。
少なくともここは、剣悟の知る世界とは掛け離れていた。
落下する前に立っていたのは鉄筋の階段で、落ちた先はコンクリートの地面だったはずだ。
たかが十数段とはいえ、頭から逆さに落ちて無事に済まないだろうことは覚悟した。
なのにこれはいったい何なのだ?
最初のコメントを投稿しよう!