問題児

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私は授業が終わると直ぐに教室を飛び出した。 きっと雛子がいる保健室へと向かって廊下を駆け抜けた。 雛子がリストカットを始めたのは、高校2年生の頃だったらしい。それ以前にも、拒食症や失声症を患ったり、精神的にボロボロな時期が多かった。 詳しい事は、雛子自身が話さないから解らないが、家庭に事情があったと私は思っていた。 思い返せば、学校行事にも雛子の両親が来た事はなかった。 雛子も元々は大人しく、成績は優秀で授業放棄するような子じゃなかった。 それが、2年生の夏休み明けから暫く学校を休んだ。 周囲では、「妊娠した」とか「街の不良と手を組んだ」とか、いい加減な噂が広がっていた。 そして秋を迎える頃、雛子は学校へ再び姿を現した。 まだ夏服の多い中で、ぶかぶかのカーディガンを着て、少し申し訳なさそうに私に笑いかけた。 保健室の前まで来ると、速くなった鼓動を抑えるべく深呼吸し、ドアをノックした。
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