弱虫

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暫くぼーっとして1時間が過ぎた。ふと布団から腕を出すと包帯がぐるぐるに巻かれていて、罪悪感と嫌気に襲われる。 「なんで生きてんだろ」 流れる涙もなく、帰ろうとベッドを降りた。 手続きも支払いも全て終わっていて、自動ドアを出ると白衣のまましゃがみ込んだ先生がいた。 「…なんでいるの?」 驚いてそれだけ言うと、先生は照れ臭そうに笑った。 「僕もさ、雛子ちゃんに言われて帰ろうと思ったんだけど、一人で学校に戻れば怒られるかなぁって思って…。待ってた。」 まるで子供のように笑う先生が、馬鹿馬鹿しくも一瞬温かく感じた。 「…バカじゃない」 「そうかもなぁ。」 「…何で先生なのよ」 「頭いいから?」 「どっちなのよ」 「どっちも」 こんなくだらないやりとりなんて久しぶりだけれど、そんな先生の穏やかな流れに乗せられ、少し心地好く思ってしまった。
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