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城下街のとある一軒家。
オイルの匂いが蔓延する部屋の中に、無我夢中に金属を繋ぎ合わせ枠組みのようなものを組み立てている、まだ年端のいかない子供の姿があった。
名は、曽根川ひかる。
額に汗をしつつも、ゴーグルを身につけ、金属を削る際に飛び散る火花から目を守る。
地道な作業であるにも関わらず、その子はゴーグル越しに目を輝かせ、幼さを残しながら中性的な顔立ちは、どこと無く冴えた空気を醸し出していた。
今は親元から離れ一人暮らしをしているが、決して楽なものではなかった。
唯一の救いは、自分の夢に費やすための時間が増えたということ。
また、それと同時に自給自足の生活を強いられ、生きていくために、夢のために、必要になる糧を自ら手に入れなくてはならなくなった。
そのための術として、ひかるに残されていたのは小さな頃からメカニックとして働いていた父の傍らで、遊び程度に手をかけていたことが幸いし、今となっては普及し始めた電子機械の修理を行っているのだ。
それも最初から上手くいった訳ではなく、ひかるがこの街に来たときには、既に優秀とうたわれた技師もいた。
だが、彼らは皆欲に目が眩んだのかバカ高い金額を提示し、今となっては庶民からはほとんど相手にされていない。
なんとか裕福な上級層からは、お抱えとして生活には困っていないようだが。
そんなこともあり、自身の腕に溺れず、庶民向けに作業をこなしていたひかるは、子供として、技師として、街の人から慕われるようになった。
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