転機

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殴り飛ばそうかと拳を堅く握ったが止めておいた。 「さぁ~説明して貰おうか!」 ……やれやれ。どうやら事情を話す他無いらしいな。こいつも巻き添えにしたんだ。全てを話さなきゃなるまい。 俺は1から10まで、きちんと伝えた。 「はぁぁぁあああ!?」 「ちょ、うるせぇ!! 誰にも言うんじゃねぇぞ?」 「執事……しつじ……シツジ……? 本当にあるんだなそんなの。初耳だ」 「事実だよ。ほれ、また休み時間にでも会おうぜ。じゃな」 羽衣とコイツは同じクラス。俺だけ仲間外れ。妙な疎外感だ。流石にお得意のマネーズパワーでは操作出来なかったらしい。 *** 帰り道。 どうしてだろう、羽衣はかなり不機嫌だった。 「……ちょっと、ついてこないでよ」 「俺の家を奪ったのはどこのどいつだ」 理由は不明。 訊いても「うるさい」でいなされる。俺では手の打ちようがない。 日が半分姿を隠し、いよいよ肌寒くなってきた。横で羽衣がぶるりと身震いをする。 見かねた俺は、羽衣にブレザーを羽織らせてやった。 「な、何よ……これ」 「寒いんだろ? なら着とけ」 羽衣は顔を少しだけしかめ、つんっと可愛らしくそっぽを向く。 お礼の一言ぐらいは欲しいもんだが。
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