697人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ
殴り飛ばそうかと拳を堅く握ったが止めておいた。
「さぁ~説明して貰おうか!」
……やれやれ。どうやら事情を話す他無いらしいな。こいつも巻き添えにしたんだ。全てを話さなきゃなるまい。
俺は1から10まで、きちんと伝えた。
「はぁぁぁあああ!?」
「ちょ、うるせぇ!! 誰にも言うんじゃねぇぞ?」
「執事……しつじ……シツジ……? 本当にあるんだなそんなの。初耳だ」
「事実だよ。ほれ、また休み時間にでも会おうぜ。じゃな」
羽衣とコイツは同じクラス。俺だけ仲間外れ。妙な疎外感だ。流石にお得意のマネーズパワーでは操作出来なかったらしい。
***
帰り道。
どうしてだろう、羽衣はかなり不機嫌だった。
「……ちょっと、ついてこないでよ」
「俺の家を奪ったのはどこのどいつだ」
理由は不明。
訊いても「うるさい」でいなされる。俺では手の打ちようがない。
日が半分姿を隠し、いよいよ肌寒くなってきた。横で羽衣がぶるりと身震いをする。
見かねた俺は、羽衣にブレザーを羽織らせてやった。
「な、何よ……これ」
「寒いんだろ? なら着とけ」
羽衣は顔を少しだけしかめ、つんっと可愛らしくそっぽを向く。
お礼の一言ぐらいは欲しいもんだが。
最初のコメントを投稿しよう!