何故俺は……

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「冷静なのですね」 「諦めが早いって言って下さると助かりますね」 放り込まれて直ぐ車は発進し、どこに行くか知らされないまま車に揺られる。 飛び出そうにも右を見ればヤクザ、左を見ればヤクザと見事にサンドイッチ状態だし、下手をすればこの時点で殺られる。 「……あの、どこに行くんですか?」 「着けば分かります」 ……体をばらされて内臓を売り飛ばされるのだろうか。 短かったなマイライフ。未練たっぷりなんだが、志半ばとは残念だ。さらば我が家族、さらば我が友人よ。俺が居たという事を忘れないでくれ。 移り行く景色を窓から眺めつつ、自分の人生を顧みていた。 「あの、最後に親父と話したいんですけど……」 「大丈夫です」 何がだ。答えになってねーよ。 畜生め。素朴な要求さえ飲んで貰えないのか。 もう完全に諦めた全て投げた。どうせ死ぬんだ。武士道ここにあり、潔く抗うのを止めてやろう。武士じゃないけど。 体が前に傾く。どうやら到着したらしい。 促され車を降りると、目の前には、生まれてこの方1度も見た事もない大豪邸が立ちはだかっていた。
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