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冷たい風が襲い、ブルリと身震いする。
春だと言ってもまだ夜は冷える。肌寒い空気が体温を徐々に奪ってゆく。
「ご苦労だったわね」
屋敷の中から出てきた小柄な少女は言うと、コツコツとハイヒールを鳴らして近づいて来る。
「うぐっ!? な、何すん……!?」
少女の顔は確認出来なかった。
何故ならその前にヤクザが俺を地面に押さえ付けたから。力で敵う相手ではないが故に抵抗はしない。実際ビクともしないしな。
じんわりと叩きつけられた頬に痛みが伝わる。
そして少女は俺の肩を思い切り踏みつけ、淡白な声色で衝撃の言葉を宣った。
「市東峻ね? 心から喜びなさい。そして跪きなさい。今日からあなた、私の執事だから」
「――は?」
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