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俺は至って一般高校生だ、と自負している。
一般高校生だ……と思う。
一般高校生……だ、多分。
それなのに今こうして、ある人に仕える身となっている。
池に架けられた石橋から下を覗く。
澄んだ水面に映る半月は細波に揺らぎ、自分の影もまた歪んでいる。
暫くそう眺めていると、映る人影が2つになった。
「なにサボってんのよ」
「……休憩だっての。誰かさんに奉仕してると気が滅入るからな」
「なっ、何よ!! 私がワガママみたいに聞こえるんだけど!?」
実際そうだろ。
……いや違う。ド・ワガママが正しいか。
――目の前にふんぞり返るお嬢様。皮肉にもこの人が俺のご主人。こいつが上で、俺が下。
俺の平和な日常をぶち壊した張本人である。
ある条件の元、俺は仕方なくコイツの執事になる事になった。
……とは言っても、俺も満更でないのだが。
そうだな。こうなった顛末を詳しく説明してやろう。
***
俺の通う高校、愛崎学園は進学校でもない癖にやたらと春休みが短い。休みが来たと思ったら直ぐ始業式。疲れが取れないまま次学年を迎える事となる。
「……なあ峻。何ボーッとしてんだ?」
修了式を終え帰路を急いでいると、隣を歩く親友の古河恭(フルカワ タカシ)が問い掛けてきた。俺と名前が被っていて、コイツとは入学以来の付き合いだ。
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