何故俺は……

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「でもさ、でもさ! かなり可愛くなかった!?」 「ま、まぁな……」 一方的にナンパの話を続ける親友の言葉を聞き流しながら、買い物を終えた俺は来た道を戻る。 「今日食ってく? カレーにしようかと思ってるんだが」 「え!? 良いの!? なら行く! 行く行く行くイクーーッア!」 最後の発音はどういう風にしたのだろう? 聞き違いだ。そういう事にしておこう。うん。 帰宅してすぐに準備に取り掛かる。 「出来るまで適当に寛いどいてくれ。時間かかるかも」 「オッケー。適当にエロ本探索でもしてるよ」 「待て。それは男友達が男友達の部屋に来たときに発生するイベントだ」 「俺は男だよ!? その上お前にとって唯一無二の親友だって!!」 まあしかし絶対見つからない自信がある。だって鍵掛けてるから。 ――十分後。 「……おっ? 発見!!」 「なっ!? 早……痛っ!!」 う、嘘だろ? 何故恭の手には、机にしまっていた筈の性的な本が握られていた。何故だ。 動揺して包丁がぶれてしまったではないか。 「鍵を掛けるとか1番怪しいんだよね。しかも俺様の前に鍵は無力」 うわあ、ピッキングですか。タチの悪い親友だ。 俺には目もくれず、表紙を見るのに没頭するエロフリエンド。鼻の下が伸びてやがる。 「痛……」滴り落ちる血の雫。ヤバい、早く治療しなくては。
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