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「……あんたら、何やってんの?」
谷崎先生の、呆れたような視線と声。
僕は真っ赤になって、慌てて先輩の胸を触っていた手を引っ込めた。
先輩はというと、ぱっと自分の胸を押さえて、わざとらしく身をくねらせる。
「いやぁ~ん、ばかぁん、エッチ!」
「何がばかぁん、だよ。馬鹿はあんたでしょ有賀さん」
全く、やってくれるわ。とぼやいて崎先生は頬を押さえため息を吐いた。
「担任が貴方を探しててね、きっとここだろうと思って呼びに来たの。今すぐ生徒指導室へ出頭しろってさ」
小さく頷いて有賀先輩は立ち上がった。
「曽根川、ゴメンだけどそこ片付けて鍵かけといてもらえる?」
有賀先輩は机の上の碁盤を顎で指し、部室の鍵を僕に渡す。
「はい」と応じると、彼女は「よろしくね」と手を振って、さっさと部屋を出て行く。こちらを振り返りもせずに。
堂々と廊下を歩き遠ざかる後姿に、溜息が零れた。
何も悔いてはいないと宣言するような、凛と伸びた背筋。
確信する、きっと先輩は笑っている。
いつものように、その顔には薄い微笑が張り付いている。
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