14人が本棚に入れています
本棚に追加
「先生、有賀先輩はどうなるんですか?」
ごめんなさい、と谷崎先生はうな垂れた。
「……正直私にも解らないの。こんなこと、先生方も始めてでしょうし。校則に整形しちゃならん、って項目がある訳でもないけど」
良くて数週間の自宅謹慎。最悪、退学。
苦々しい表情で谷崎先生はそう告げた。
「ねぇ先生、もしコレが僕だったら、酌量扱いになるんでしょうか?」
驚いたような視線を向けられたので、慌てて首を振った。
「違います、ちゃんと先生と母との約束は守ります!もしも、の話ですよ」
「ああ良かった。驚かせないでよ、また貴方のお母さんに泣きつかれちゃうわ。そうね……変な話だけど、貴方なら多分許されると思うわ」
「そうですか」
静かな憤りを覚えるが、それは別に谷崎先生が悪いわけではないので胸に押しとどめる。
「さ、私も保健室戻らなきゃ。曽根川さんも早くしなさい、もうすぐ昼休み終わっちゃうわよ?」
一気に人気の無くなった部室を、静かに片付ける。
大幅な差がついた、碁盤の上。下手をしたら、もう二度と先輩と打てないかもしれない。
そう思うと、熱い鈍痛を与えるナイフが胸を刺した。
薄くて、脂肪の全くない、まるで子供みたいな自分の胸。ちっとも女らしくならない胸。
決して女になりたくない、僕の心。
最初のコメントを投稿しよう!