どうせ不変の世界なら

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ぼんやりとした頭のままで、午前の授業をこなした。 「ひかる、お昼どうする?うちら、購買行くんだけど」 「ごめん。ちょっと怠いから保健室行って来ようかなぁと思って」 「え、風邪?大丈夫?」 気遣ってくれた友人に、大丈夫と手を振って応えて。僕は教室を出て保健室とは真逆の方向へ歩き出した。 家庭科準備室。校舎の別棟に有る家庭科被服教室、その隣の小部屋。 生徒の滅多に立ち寄らないその場所が、囲碁部の部室なのを知っている生徒は先ず居ないだろう。 妙な確信が有った。 先輩はきっとそこに居るだろう、いつもと変わらずに。 紙パックの調整豆乳をストローで吸い上げ、パンを齧りながら囲碁盤と向かい合っている。そんな気がしていた。 古びて建て付けの悪い木製の引き戸をゆっくり開けると、やはりそこに先輩は居た。 狭い部屋の中。マネキンや壊れたミシンを押しやり、中央に置かれた古びたパイプ椅子と事務机。 そこに囲碁盤を広げ、真剣な横顔が配置された石をじっと見つめている。 彼女は真冬でも真夏でも、制服姿だ。すらりと伸びた足、膝小僧の丁度真ん中までのスカート。 黒のハイソックス。セーラー服の上から羽織った灰色のカーディガン。 小さく息を飲んだ。 いつもの格好。ただ違うのは、以前よりも明らかに膨れ上がった胸だけだ。 「ああ曽根川か。久しぶり、元気してた?」 言葉なく入り口に佇んでいた僕に気がつき、有賀先輩はひょいと顔を上げてにっこりと微笑みかけた。
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