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第一印象は背が高いなぁ、という事。
未だに小柄で、男の子だか女の子だか解らないと称される子供っぽい容姿の僕とは正反対の人だった。
「この前2年生から預かった退部届けなんですけど……」
「はいはい、ええとここに顧問印を押すのよね?ちょっと待っててね」
保健室の奥、真っ白なパーテーションの裏側に先生は姿を消し。
僕と彼女だけが残された。一瞬の沈黙。ちらっと僕の姿を見て、先輩はこう尋ねてきた。
「貴方、一年生?」
「あ、はい。そうですけど……」
「何か部活、入ってる?」
「いえ、特には」
答えたと同時に、いきなり肩を捕まれた。急に肩口に置かれた綺麗な手と、真っ直ぐこちらを覗きこんできた瞳にどぎまぎする。
「囲碁、やってみない!?」
「は、はぃ?」
「ちょっと、有賀さん。一年苛めるの止めなさいよね」
奥から出てきた谷崎先生が苦笑しながら、小さな紙切れを先輩に渡す。チラリとそれを見ると『囲碁部』の文字。
「ああ、コレ?一応私、ここの顧問なのよ。一番緩くて活動してないところだから楽でねぇ」
朗らかに言う谷崎先生と正反対に、先輩は軽く溜息を吐いた。
「一応活動はしてますよ。私だけ、ですが」
「でも困ったわね、この二年生が辞めちゃったら、部員が足りなくて同好会に格下げじゃない?」
「だから、無差別に勧誘してるんですけどね」
そうか……僕はその無差別の内の一人なのか。結構美人だけど、変な先輩だなぁと感じた。
「よかったら曽根川さん、どうかしら?」
谷崎先生にそう勧められ、軽い気持ちで承諾した。先生には何かと迷惑をかけている、という負い目もあったし。
囲碁なら昔、祖父に教えてもらって少しならできたし、幽霊部員でも構わないと言われた。
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