始まりの日

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「おはよ~」 優は扉を開けると、まだ眠そうな口調で言った。 扉の先にはリビングがあるが、実際にはキッチンとダイニングがついたLDKである。 「あ、優ちゃん! おっはよ!」 リビングに入ってまず一番に声を掛けて来たのは、優の姉、優衣(ゆい)だった。 ツヤのある長い黒髪を、今はポニーテールにした綺麗な女性だ。 優との年は、6つ離れており、現在は21歳。 彼女の通う大学では、いよいよ本格的な就職シーズンが始まるところだ。 「今日は優ちゃんと2人っきりだね~。」 優衣がニコニコして言うと、優は不思議そうに辺りを見回した。 「あれ? 美優(みゆ)は?」 優はきょとんとして言うと、優衣は飲んでいた紅茶をテーブルに置いた。 「美優なら、今日は部活の朝練で、とっくに出ていっちゃったよ?」 優衣はそう言うと、再び紅茶に口をつけた。 ちなみに、美優というのは、これまた優の姉で、優衣の妹である。 優とは年が4つ離れており、今年から大学2年になる。 「ソフトボールも大変だなぁ。」 優がため息混じりに言う。 「そう言う優ちゃんは、高校に入ったら何か部活するの?」 「う~ん、これといってやりたいことも無いしなぁ……。」 優はそう言って、優衣の質問を軽く流すと、朝食をとるべく、席についた。 自分のテーブルには、2枚のトーストと、目玉焼き、それに添えられたサラダと、オーソドックスな朝食が置いてある。 普段から、優衣が毎日朝食を作っているため、その日も当たり前のように食べ始めた。 「飲み物どうする? コーヒー?ミルク? それとも間をとって……」 「カフェオレ!」 この会話も、もはや毎日の恒例となっている。優が例の如くそう言うと、優衣はニコニコしたままキッチンへ向かった。
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