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ひかりside
ドクン、ドクンと桜庭くんの心臓の音がよく聞こえる位置に私は引き寄せられた。
なぜ彼がこんなことをしたのか理由がさっぱりとわからない。
「僕も……二ノ瀬さんと同じだから」
「えっ……?」
私と同じって……なんなの?
考えるがなにも思いつかない。彼がなにを言おうとしてるのか、私には見当がつかなかった。
「僕も恋愛がなんなのかわからない」
それは突然の告白だった。
「異性を見てもドキッとしないし、どんなに綺麗で可愛い子にラブレターをもらっても、告白されても、ときめくことなんか一度もなかった」
龍馬くんから聞いた桜庭くんのことを、今になって理解した。
彼が異性からの告白を断わり続けるわけは……
「だから、断わり続けた。君と同じように、恋愛がなんなのか、僕にもわからないから……」
私と同じ理由だったからだ。
「二ノ瀬さんほど、恋をしたい気持ちは薄いかもしれない。それが男と女の恋愛に対する気持ちの差なのかもしれないけど。それでも僕は君と“同じ”なんだ……」
桜庭くんと私は“同じ”恋愛がなんなのかを知らない者同士。
「もしかしたら僕も……まだ知恵の樹の実を食べてないのかもしれない。だから……よければ一緒にそれを見つけよう。一人じゃ見つからなくても、同じ二人でならもしかしたら……」
「う……うん。一緒に……一緒に……」
私だけじゃないことが嬉しくて、それ以上に彼の言葉が嬉しくて、私は何度も、何度も頷くのを繰り返した。
……なんだろう?
先程から高鳴るこの熱い気持ちは……?
不思議と幸せな気持ちになるのは……なぜなんだろう?
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