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学校が終わって私はまっすぐ家に帰らず、遠回りをして家路についた。
母から買い出しを頼まれているのだ。
この田舎町にはスーパーと言う物がほとんどない。唯一この町にあるスーパーも住宅街からかなり離れているので買い出しは私の役目だった。
スーパーで頼まれていた物を買った帰り道、町の中を流れる川を渡る橋まで来ると、私は道から外れ、橋の下へと向かう。
橋の下には、木と段ボールで私が作った小屋があった。
私が近づくと中から小さな子犬が出てきた。
「元気にしてた?」
私が、今しがた買ってきた犬用の餌を子犬に差し出す。
子犬は美味しそうに、それを食べ始めた。
「元気になったね」
この子犬は雨の日、ずぶ濡れになりながら、橋の下で震えていたのだ。
買い物帰りだった私はその子犬をタオルで拭いてあげて、即席だが、小屋を作ってあげたのだ。
家に連れて帰りたい気持だったが、母が確実に許さないだろう事が簡単に想像できたので、それは諦めた。
それ以来、私は時折、この場所に来ては子犬に餌をあげているのだった。
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