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どれくらい待っていたのか覚えていないけれど途中で棚瀬さんが楽屋に案内してくれて今は誰もいない楽屋でとりあえず言われた通り彼を待っている。
ガチャ
「ごめん」
入ると同時に謝って来た彼に少し笑ってしまう。
「…?」
「あ、いえ。大丈夫ですよ」
「そう?」
「えぇ」
「待ったじゃろ?ちょっとしか無いけど送りたいから先、車乗っててくれる?すぐ行くけぇ」
そう言われて鍵を受け取り駐車場へと向かった。
少し遅れて彼が現れてそれから車を私の自宅へと走らせた。
「今日は本当にありがとうございました。凄く楽しかったです」
「んふふー♪それはよかったです」
「でも、わざわざ送ってくれなくてもよかったのに」
「…嫌?」
さっきまで笑顔でにこにこしていたのに急に寂しそうな声に変わる。
それはまるでうさぎなら耳がしゅんと垂れてたんじゃないかって思うくらい。
「嫌じゃないです!そういう意味じゃなくてただでさえ仕事の後で疲れてるんだし、それに打ち上げとか…」
「えぇから」
「だって…なんだか申し訳ないんです」
「わしが一緒に居たいんよ」
いつもは絶対言わない彼の気持ちはなんだか凄く嬉しくて愛されてるんだと実感する。
その後、私はいつの間にか眠りに落ちていて自宅前で彼に起こされ目を覚ましました。
「疲れた?」
「あ…いえ」
「そう?」
「はい。送ってもらったのに心配までしてもらってすみません」
いつもならここで「えぇよ」と言ってくれるのにこの日は何も言わない。
それどころか少しぶすっとしていた。
「あのー…」
「嫌」
「え?」
突然、何かを嫌がられてしまったのです。
理由を考えていると彼から意外な答えが返ってきました。
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