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ヴーヴーヴー…
悩み過ぎてうとうとしていた私の手の中で携帯の液晶画面が彼の名前を映し出して唸っていた。
「…はい。…もしもし」
「ごめん。寝てた?」
「ううん。うとうとしてたけど大丈夫」
「そう」
「うん」
「……」
「……」
そのまま30秒近くも沈黙が流れて私達は同時に口を開いた。
「「…あの…」」
こんな沈黙を最初に破るのは付き合っていた頃からいつも彼の方で…
「なん?京子からでえぇよ」
「いえ。晴一さんからで大丈夫ですよ」
「今日はまだ酔ってないけぇちゃんと聞けますよ」
「まだってこれから飲むつもりですか?」
「わしから一日の至福を取ったらいけんよ」
「いや、だってもう…まぁいいか」
「…?なんよそれー」
電話口で話す久しぶりに聞いた彼の声は私が一番好きな彼の声でそれはいつものようにとても楽しそうに笑っていて「隣にいたら嬉しいのにな…」なんて思ってしまったらとても苦しくなった。
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