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「まったく…なんで貴方がこんなところにいるんですか?」
――事務所がすぐそこだからです。
「そういう零さんも、よくここにモンスターがいるって分かったな」
「当たり前でしょう。私だってあの音が聞こえるんですから。それに、できるだけ多くのモンスターを倒した方が有利に立てますからね」
「………」
どうやら本気で勝つ気らしい。よくよく考えれば、負けは死を意味するわけだから それなりに必死にもなるか。
それにしても……
「…なんです?いきなり黙ったりして」
「ん、いや…その……そこまでして叶えたい願いってなんなのかなぁ~って」
「貴方には関係ありません。少なくとも…人に話すようなことではありませんわ」
零さんは ピシャリと言ってのける。それでその質問は終わりと言わんばかりの視線に言葉を失うも……
「貴方はどうなんですか?」
まさかの向こうからの問いかけ。こちらにしてみれば意外どころではなく、当然のように言葉を失う。
「あぁ…願いか。そういうのは…今のところは無い…かな」
「――ッ、貴方…!」
「でも……!」
「――?」
「この力で、誰かが助かるなら……俺がライダーとして闘い続ける意味はそれだけで十分なんじゃないかって思う」
ナニカを守れないこと。
大切なモノを失うこと。
それは自分の中に大きな闇が出来るだけでは済まされない。
無関心な他者への怨恨。
無力な自身への呪詛。
限りなく理不尽で残酷な世界への嫌悪。
誰あろう、自分が経験したことだ。
だからこそ――
「俺は守るためにこの力を使う。それが、俺が龍騎として歩むべき道だと信じてる」
「……周りのライダーは、皆敵なのですよ。私を含めて…。
それを承知で貴方は…そのような綺麗事を言い続けるのですか?」
「殺し合うのがライダーのルールなら、これは綺麗事じゃなくて邪道なんじゃないかな?」
「……!」
「でも、そんなのはどうでも良い。人を救うのに善も悪もない。
ただ俺は往くだけだ。俺が進むと決めた道を」
随分と久しぶりだ、
こんなに迷いの無い眼で人を見たのは。
「………」
零さんは、ただ口を閉ざしている。
そして――
「良いでしょう。ならば私からは何も言いません。
せいぜい足掻いてみせることですね」
彼女はぷい とそっぽを向く。
だが、すれ違いに立ち去るその横顔は…どこか微笑んでるようにも見えた。
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