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「……どういうことですか?」
「言葉の通りだ。私達は少なからず人々と関わりを持ちながら生きている。そこに綻びが出来れば波紋は全体に広がるのは当然のことだ。
言いたいことは分かるか?要するに…お前みたいな単細胞でも、誰かの都合でいなくなることは許されないんだよ」
彼女は煙草に火をつけ、ゆっくりと煙を吐く。
「私はね、君とは別に…何かを失って狂ってしまった馬鹿を二人見ている。
あの時君に似たものを感じた…だから私は無理矢理にでも立ち直らせたんだ」
その顔はどこか懐かしいものを見つめるような寂しい顔を……
「だが…人間は弱い。失うにしろ殺すにしろ守るにしろ…唯の人間じゃ許容できるのはせいぜい一人だ。
それが…たまにやるせなくなってな」
そう言い、彼女は煙草を灰皿に押しつける。
「……いなくなっちゃ…いけない」
無意識に反芻するその言葉……頭の中を反響し、グルグルと……
誰かがいなくなると、誰かが辛い思いをしたり、悲しんだり、憎んだり、
負の感情が、生まれる。かつての俺のように…
そっと…ポケットの中にあるカードデッキに触れる。
失う苦しみを、この力があれば止めることができる。
ライダーとして、ライダー同士で戦うことの意味はまだ受け入れられないけど…
人を守るくらいなら……
―キィィィィィィン―
「―――!」
外から聞こえるあの音。
思わず立ち上がり、
「――所長!!」
「…なんだ…急に?」
「俺は…大丈夫です。まだ答えは出てないけど…大事なものはわかります。だから、安心してください」
そう言い、事務所を飛び出す。
十メートルほど走った先にあった鏡に…
「……!!」
見慣れない人型、腰にはベルトがない。
おそらく…モンスター。
「…もう…失う苦しみはたくさんなんだよ!」
そのためなら、なんだってやってみせる。
「……行くぞ、俺!」
龍の紋のデッキを鏡に翳し…
「変身!!!」
――叫んだ。
力を…覚悟を…宿命を受け入れるかのように。
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