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体の外側に第二の皮膚が加わるような感覚を覚えたときには、既に鏡のなかに飛び込んでいた。
鏡は水面のように脆く、ふと目の前には変則的なバイクが
あれに乗るんだ
直感で悟り、バイクを走らせる。
瞬間、あらゆるものを無にする閃光の直後、全てが逆のもう一つの世界にいた。
「あいつか!」
バイクを止め、眼前の敵に全神経を注ぐ。
デッキからカードを抜き、
『Sword vent』
空から降りてくる片刃剣を掴み取る。
直後、殺意を隠さず弾丸のように走り出すモンスター
『――――!!!』
恐れか、狂気か、憤怒か、その勢いは凶々しい。
だが、それ故に読みやすい。
「――ふっ、はっ!!」
刹那の単位で回避しながら、剣で斬りつける。
――甲殻に食い込み弾け飛ぶ火花に、暗黒の高揚を覚える――
なぎ払うような一撃を躱し、蹴りを見舞う。体がまるで別人のように動く。頭のイメージが、従順にカタチになる。
――相手が人間でないぶん背徳感がないのが安心か、不満か…今の自身には分からない。理解するだけの余裕もない――
幾重の斬撃の末、相手は息も絶え絶えに立ち上がり、なおまた吠える。
――相手が人間なら命を乞う哀れなさまを見れたのに、と奥底で誰かが嘆いた――
デッキからカードを引き抜く。
龍の頭を象形にしたようなソレを右手の機械が読み取り、
『Final vent』
赤い龍が舞い降りた直後、体じゅうを走る紅蓮の波動。
四肢を、肉体を支配する破壊のエネルギー
それを帯びたまま、高く、高く飛翔する。
右脚に全神経を、全ての意識を敵の破壊という概念に定着させる。
『――!!!!!』
背後に回った無双龍ドラグレッターが吠えた直後、体は紅蓮の弾丸そのものになった。
「うぉおおおおおおあああああ!!」
弾丸のように速く、刃のように鋭く、そして煉獄よりも熱く、マグマが破裂したような紅蓮の蹴撃が、狂いなく獲物に突き刺さった。
『―――!?!?!?』
自身の体に爆撃を、紅蓮を帯びたまま、モンスターは灼熱の業火に飲まれ、やがてそのものになった。
「―――ハッ!」
緊張が解かれ、思わず肩で息をする。
ふと、上を見上げると
『―――』
モンスターから出てきたナニカを、ドラグレッターが喰っていた。
そして…
「……あ」
爆炎の奥に立つそいつを見た。
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