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-Zero side-
天気は晴れ。
昨日の戦乱が嘘かのような青空である。
うん、実に清々しい日和である。
で、だ…。曰く、こんな晴々しい日に――
「――こぉんな晴々しい日に灰色の建物の中に閉じこもろうなんざ、今日この日に快晴をくださった神様に申し訳がない。そう思わない、ヤッくん!?」
「……ソーデスネー」
目の前の女の天気は年中晴れ。くっそう、いい加減 曇れ。作物ごとコッチが干からびるわ。
「あぁ!この子も気付いたら数学なんか始めてるし。この非国民が!
立て国民よ!今こそゆとり教育に死を!」
「…キャーアイナサンステキー」
パソコンでいかがわしいゲームやってる奴が言えたセリフではない。
あと一応言っとくけど、ゆとり教育もう終わってっから。完璧失策だからアレ。
ん、待て。もう終わったのか? オレだけ時間軸ズレてるのか、はて…。
「仕方ないでしょう、先輩からの宿題なんですから。コッチが従順に従えば面倒は少なくて済むんですよ」
あの純情超人、マジ手に追えない。
逆らうという手もあるが、あの魔界天使に精神攻撃の類いは危険だ。闇属性ならまず勝ち目はない。
こちらは鋼のグーで向こうは布きれのパー。
力量云々より更に致命的かつ基本的な点で勝敗は明らかだった。
「ふぅん、上手く逃げるわね。あなた、いつからそんなに聞き分けのいい子になったのかしら?」
どこか嬉しそう…ではなく、面白がるように先生は笑う。
「…さぁ。あいにくオレには、友情努力勝利とかいう言葉は売り切れでしてね。
約束は必ず守るようにしてるだけです」
少なくとも、この掟を守っておけば厄介ごとに巻き込まれることはあるまい。
迷いが心の隙間を生むなら、最初から軌道を決めておけば良いのだ。
出来ることは出来る。出来ないことは出来ない。
自分にも他人にも、これ以上のものを望んではいけない。
「良いわねぇ。感情より理性、理性より決まりごとってことかしら?」
「…考え方としては二流ですがね」
「じょーだん。せいぜい四流よ。不良品も良いところだわ」
「…ふぅん。ま、なんでもいいですけど」
「そーよ、そんなの卓上の詭弁。あんま自分の頭を過大評価するんじゃないわよ」
「……?」
「自分のこと、分かった気になってるんじゃねーって言ってるのよ」
玩具を眺める子供みたいに、先生はクスリと笑った。
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