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「――ッ、アンタ…」
「やれやれ、お転婆が過ぎる御方だ。それで姫様…ガラスの靴は見つかりましたかな?」
オルタナティブ・ゼロの鎧を纏った耶俥誠司が敵の姿を見ながら言う。
「助けたつもり?言っとくけど私は……」
「ん~、悪いけどただ血迷っただけだ。ほっといた方がいいぜ?」
軽い微笑が浮かぶのを肌で感じる。
――まったく……こんな行為、まさしく無為だというのに…今は何故か気分が良くて仕方がない。
「おかしいな。こんな実感……久しぶりすぎる」
――虚ろだった感覚が満たされる。
これを味わったのは、つい昨日の話だったかな?
「…まぁいい。まとめて折り畳んでやるよ。そんなわけで片一方は頼む」
「好きにしなさい!足引っ張ったら殺すわよ!」
「承った。ま、そういうわけで…」
向き直り、嘲るような笑いを浮かべる。
「さて……オレのターンだ」
『―――!!!』
『―――!!!』
挑発につられたように、その獣は地面を蹴り一直線に襲いかかった。
「さぁて、猿はどう捌くか……うわっと!」
飛び掛かる一閃を躱しながら、カードデッキの溝に手を伸ばす。
此所に武器があることは、昨日の内に調べておいた。
あとはコイツを……
「…どうするんだ?」
――ブォン
「よっと危なッ!」
剣が記されたカードを抜いたは良いものの……
「うぉおおおおおお!!!」
――叫んでみた。
しかし何も起こらない。
当たり前か……
『――!!!』
「うわっ――とぉ!」
飛び掛かるのを躱しつつ…
「ソード…ベントォォォ!!」
書かれた文字を絶叫。
しかし何も起こらない。
――これは当たりだと思ってたのだが……
「出ろぉぉぉォォ!!
セイバァァァァァ!!」
しかし何も起こらない。
――さすがにコレはないか。
試してみる前から既に諦めてたりもした。
――と、
『―――!!!』
猿が尾を引っこ抜く。
何事かと思ったら……
「ヤバッ、それ銃……ッ!!」
その通り と相手は笑うように引き金に指をかける。
だが――
「……ん?」
――ブォン
大気が鳴った。
何事かと思った直後、視界を覆い尽くす黒い影―――
『―――!?!?』
「…って、オゥワーーッ!!」
比喩もなく“降ってきた”ソレに巻き込まれ、躯が一気に飲み込まれた。
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