47人が本棚に入れています
本棚に追加
耶俥誠司の視界に、颯爽と広がる失われた浪漫の胎動。
遠方から疾走するサイコローグ、フワリと地面を這うように停滞した瞬間……
「……お」
下方へ突き出した両腕が、瞬く間に車輪を帯びる。
「……おお」
伸びきった両脚から、吐きだされるように現れた車輪。
それに順応するかのように、躯の全ての機構が組み変わり……
――気がつけば、怪物の姿は…一台のバイクへと変貌していた。
人これを“変形”と呼ぶ。
「――お、おおおおおおおおおお!!!!」
あまりのインパクトに思わずブラボーと叫びかける。
――なんかもう、稼動変形メカって漢のロマンだよね?
「…やべ。なんかちょっと感動」
「くだらないコト言ってないでさっさと仕留めなさい!」
――アイツまだいたのか?
「――ん、よっと!!」
漆黒のバイクに飛び乗り、一気に速度を上げる。
けたたましい 轟音を響かせながら疾走、気がつけば眼前に広がる敵の影――
「らぁッ!恨みはねぇが覚悟し――」
――異変を感じたのは、直後だった。
「――あ?」
ガクン とバランスが乱れる感覚、
内側に倒れ込みそうな予感……いや、コレは確信か。
「―――ッ!!!」
刹那の間で、バイク乗りとしての本能が片脚を地面へと伸ばす。
摩擦熱を上げる地面に片脚がついた瞬間、その脚が“軸”になったのを感じた。
――あぁ、そういうことか。
横に平行のまま超高速でシフトする視線を仰ぎながら全てを悟る。
アクシデントではなく、理不尽なくらいの必然。
だが、気付いたところで既に遅い。
速度は落ちず、ただただ車輪は暴走を続け、怪物と哀れな青年は武装に身を包んだ合金の塊となり、
比喩ぬきで――
スピンした。
「――ぁ、あ゛あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
踊り狂うように回転する殺人独楽。
エコーのかかる絶叫
それすらかき消す地面の摩擦と機械の唸り。
以前速度は落ちることなく暴走する弾丸は、躱す間もなくデッドリマーの全身にぶち当たった。
『――――!?!?!?』
ゴォォォォォン
大地がうねりとともに爆炎を撒き散らす。
デッドエンド
暴走と回転を加えた殺人舞踏は、その名の通り敵に死の終末を突き付けた。
「……いや…なんつーか……し、しんどいな、コレ」
最初のコメントを投稿しよう!