5・闘志

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耶俥誠司の視界に、颯爽と広がる失われた浪漫の胎動。 遠方から疾走するサイコローグ、フワリと地面を這うように停滞した瞬間…… 「……お」 下方へ突き出した両腕が、瞬く間に車輪を帯びる。 「……おお」 伸びきった両脚から、吐きだされるように現れた車輪。 それに順応するかのように、躯の全ての機構が組み変わり…… ――気がつけば、怪物の姿は…一台のバイクへと変貌していた。 人これを“変形”と呼ぶ。 「――お、おおおおおおおおおお!!!!」 あまりのインパクトに思わずブラボーと叫びかける。 ――なんかもう、稼動変形メカって漢のロマンだよね? 「…やべ。なんかちょっと感動」 「くだらないコト言ってないでさっさと仕留めなさい!」 ――アイツまだいたのか? 「――ん、よっと!!」 漆黒のバイクに飛び乗り、一気に速度を上げる。 けたたましい 轟音を響かせながら疾走、気がつけば眼前に広がる敵の影―― 「らぁッ!恨みはねぇが覚悟し――」 ――異変を感じたのは、直後だった。 「――あ?」 ガクン とバランスが乱れる感覚、 内側に倒れ込みそうな予感……いや、コレは確信か。 「―――ッ!!!」 刹那の間で、バイク乗りとしての本能が片脚を地面へと伸ばす。 摩擦熱を上げる地面に片脚がついた瞬間、その脚が“軸”になったのを感じた。 ――あぁ、そういうことか。 横に平行のまま超高速でシフトする視線を仰ぎながら全てを悟る。 アクシデントではなく、理不尽なくらいの必然。 だが、気付いたところで既に遅い。 速度は落ちず、ただただ車輪は暴走を続け、怪物と哀れな青年は武装に身を包んだ合金の塊となり、 比喩ぬきで―― スピンした。 「――ぁ、あ゛あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 踊り狂うように回転する殺人独楽。 エコーのかかる絶叫 それすらかき消す地面の摩擦と機械の唸り。 以前速度は落ちることなく暴走する弾丸は、躱す間もなくデッドリマーの全身にぶち当たった。 『――――!?!?!?』 ゴォォォォォン 大地がうねりとともに爆炎を撒き散らす。 デッドエンド 暴走と回転を加えた殺人舞踏は、その名の通り敵に死の終末を突き付けた。 「……いや…なんつーか……し、しんどいな、コレ」
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