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-Doragon side-
揺らめく業炎の奥。陽炎がごとく虚ろな像を結びながら、その人影は闊歩する。
「―――!」
瞬間、モンスターの類いと見違える。
当然だ。あの時に見た姿形で無ければ…冬摩刃はその影を敵と見なしていたからだ。
「…凪川…さん?」
その人影…ナイトの鎧を纏ったライダー、凪川零の姿から放たれる圧倒的な敵意。
右腕に構えた剣のように鋭く刻まれたその衝動は……
「―――ッ!!!」
次の瞬間、獲物を仕留める騎士のごとく解き放たれた。
「しま…ッ!!」
ガァン と火花が散る。
上段から振り下ろされた迷いなき一撃は、辛うじて突き出したバイザーによって阻まれた。
「…賢しい真似を」
軽い音を弾きながら、ナイトは距離を開く。
「零さん、待て!
俺は君と争うつもりはないんだ!」
「…なんですって?」
焦りながら放った言葉に、彼女は落ち着いた声で反応する。
「言葉の通りだ!俺はライダー同士で争う気なんか無い!だから…」
「………そう」
冷淡な声が返る。
酷く落ち着いたモノだが、それは酷く背筋を凍らせるほど冷たく…
「…つまり、貴方は此所で死にたいのですね?」
その返答は悍ましいほど冷酷なモノであった。
『Sword vent』
紡がれる冷淡な機械音、
ナイトの両腕に鋭利なランスが浮かび上がる。
「くそッ!!」
叱咤交じりにカードをデッキから引き抜く。
直後、ナイトの躯は大きく宙に飛び上がる。
『Guard vent』
――ガキン
鈍い音が火花と共に響き渡る。
空中からの一撃を阻む二つの楯。龍の甲殻を思わせる烈火の鉄壁が龍騎の両腕にはめ込まれていた。
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