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「――ッ、このッ!」
僅かな焦燥に駆られたように、ナイトは休む間なく槍撃を繰り出す。
上から迫る一撃を受け止め、
横から迫る一撃をいなし、
斜めからの一撃を弾く。
「――なら、これで!」
一歩引いた直後、とどめと言わんばかりに繰り出された打突。
槍を相手にする上で最も脅威的かつ威嚇的な一撃が風を切って走る。
だがそれこそが、龍騎が狙っていた好機だった。
「――なッ!?」
凪川零が見たモノ、
それは退くでも躱すでもなく、
前方に楯を構え直進する龍騎の姿だった。
「――おぉおッ!!」
ぶつかる烈火の楯と漆黒の槍、互いに直進し合う力と力のぶつかりあい。
その結果、
――矛盾がごとく、互いの鎧が真後ろに吹き飛んでいった。
「――ッうわ!」
「キャッ!」
地面に打ち据えられる両人。
思惑が上手くいったと安堵する冬摩、だが――
「くっ、この人…」
無傷ながらも、凪川零は…
「なんて命知らずな…ッ!!」
槍で突き穿たれることを微塵も恐れなかった敵を前に…沸き上がる畏怖の感情を抑え切れなかった。
直感が告げる。
この男は、生かしておけば後々 最も厄介な障害となると…
「…不覚でした。まさか私が敵の力を見誤るなんてね」
「……え?」
「残念ですが、もう…逃がしませんよ」
『Trick vent』
その直後、冬摩刃の目の前に…
「……ッ、なんだコレ!?」
文字通りの“幻惑”が立ちはだかった。
鏡が引き裂くような音と共に、ナイトの鎧が分裂。
気がつけば、ナイトの鎧は二人に――
「いや、待て…それは…」
――否、分裂した瞬間、その姿はさらなる分裂を開始する。
まるで無限鏡、
ただひとつ違うのは――その鎧は全てが紛れも無い“実像”であること。
「…万事休す、か」
直後、八体の騎士が容赦なく襲いかかる。
前方から迫る一撃を楯で受け止め……
――ズバン
「――ぐ、あッ!!」
真横からの斬撃。よろめく一瞬のスキが、前方からの攻撃の対処を遅らせた。
「――ッ!!」
叩き付けるような一撃を真正面から打ち付けられ、叫ぶことも忘れ悶絶する。
背を折る龍騎に、横のナイトが風を切りながら烈蹴を叩き込む。
「――ガッ!!」
真正面からの追撃。
腹を蹴り上げるような一撃が 龍騎の躯を大きく吹き飛ばした。
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