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激しく地面に転がる龍騎の躯。瞬時に叩き込まれた連撃の痛みに身体の自由を奪われる。
「……ぐ、ぅ」
怒りも憎しみもなく、ただ強い、そう感じた。
パワーではこちらに部がある。だがソレ以外…例えばスピード、武器による殺傷能力、経験、全てに向こうに利がある。
「…もう終わりですか?」
分身を消滅させたナイトが地を踏む。
その姿は、たとえようもなく鋭利で凜としていた。月夜ならば美しいとさえ思ったかもしれない。
そしてその姿は、たとえようもなく人に近く、どうしようもなく人に在らざるカタチだった。
――ヒュン、空気が裂け、喉元には鋭い殺意。
事実は大したことではない。ただ自分が喉元に槍の先端を突き付けられてるだけのこと。
だが、その騎士が発する覇気は…少なくとも自分は今まで経験したことがない。
これが…ライダー
自分の望みのため、力と仮面を得たモノの姿。
「…なんで、こんなことを………?」
「…ライダー、だからです」
優しく諭すような声が、冷たく響いた。
その返答に――
「…そっか」
何故か…安堵の声が漏れた。
あと一歩、ナイトが脚を踏み出せば、細く鋭利な剣が喉を貫く。
そして、その一歩が今ためらいなく踏み出され………
『――――!!!!』
空間に響き渡る轟音、
張り詰めていた緊張が、全く異なる戦慄に消し飛ばされた。
「――ッ、これは…!?」
解答は上空から、二人のすぐ目の前に現れた。
黄色に塗られた巨大な蜘蛛、ディスパイダー・R(リボーン)は眼前の獲物に狙いを定める。
「――ッ、モンスター…こんな時に…!」
敵と分かるや否や、ナイトの身体が空中に飛び上がる。
『――!!』
ディスパイダー・Rの上体から細かいナニカが連続で打ち出される。
まるで毒針の弾丸、黙視すら難しいソレを…
「はッ!!」
ナイトの剣は事も無げに叩き落とした。
「食らいなさい!!」
そのまま上空から一閃を見舞う。
ザン と火花を散らしながら斬撃が飛ぶ。
『――!?!?』
苦痛に悶えながら、ディスパイダー・Rがナイトの身体を振り落とす。
空に飛ばされたナイトの身体、だが…
「…あら簡単」
どこか余裕を保ちながら、クルリと着地する。
「…待て、俺も」
「結構です。ライダーならまだしも、この程度の敵に遅れなどとりませんわ」
――やはり手厳しい。
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