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ーZero sideー
「………」
――さて、この状況をどう説明すべきなのだろうか。
語るのなら、あの先輩目当ての変態をしばいた後からだ。
鏡から這い出たオレを待ち構えていたのは、仁王が如く立ちはだかる例の女の姿だった。
そこから寸の間もなく羽交い締め。嫌ダ嫌ダともがくオレの首根っこを適度に絞めつつ拉致、何を思ったか教授室に連れ込み監禁。
五分に満たない完全犯罪。唯一の失策は処刑場として此処を選んだコトだろうな。
そうでなくとも、オレのギロチンの手綱を引いてるのはこの部屋の主だ。
で、だ……
この部屋で何をされるのかとビビりまくったオレに、彼女が話したコトは――
「…ハッ、殺し合い…か」
洒落にもならない。
血の宴のオリエンテーションだった。
「…お前、アレだ。とりあえず…馬鹿げてる、と言っておくよ」
「言いたいコトはわかるし、それは正論ね。でも…少し甘いんじゃない?」
「あ?」
「だってそうでしょ?
私達は何処でだって争って、自分の利益を勝ち取っている。相手を蹴落として、ね」
「………」
「あなたは違うのかしら?」
「…阿呆か。分かりきったコトを抜かすな」
勝者は得、敗者は失う。敗者は勝たない限り一生敗者のままだ。
分かりきったもクソもない。
それは世界の心理だ。
もっと言えば……それの理論で、負け犬路線を全力で突っ走ったクズが今、コイツの目の前にいる。
「…で、何?お前、オレを殺したいのか?」
「そうね。あなたが棄権してくれれば、私も無駄な手間が省けるかしら」
要するに死ぬのも自己責任ってわけだ。
つくづくタチの悪い。
汚いなさすがライダーバトルきたない。
「…ひとつ、気になるコトがある」
「なによ?」
「十三人のライダーが戦って、最後の一人の願いが叶うってのは分かった。
で、具体的にはどこまで可能なんだ?」
「………は?」
「だからあるだろ。不老不死だの億万長者だの人間辞めるだの、そーゆー無茶振りに対して規制は無いかって聞いてんだ」
「知らないわよ。そういう望みだって叶うから、ライダーが闘えるんじゃないの」
確かに、普通に生きてて叶うような望みのために殺し合うわけないか。
なんだかんだでリスクは個人で高いわけだし、見返りもそれなりじゃないと意味がない。
だとすると…
「…妙だ、話が美味すぎる」
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