5・闘志

22/27
前へ
/198ページ
次へ
「上手すぎるって…なにがよ?」 「ん、別に…。ただ、何でも叶うって言っちまえば大抵のやつはバトルに乗るよなーって。 案外、ただ殺し合わせるコトが目的なんじゃねーか?」 「……あのね、そんなことさせて何になるのよ?」 「……さて、分からんね。勘で言うなら……最後の一人の魂を頂く、とか? 理屈で言えば他の奴等より強い魂なわけだし、何かの役には立つんじゃね?」 一から十まで当てずっぽうな憶測に、彼女はさぞ呆れたように はぁ とため息をつく。 「もういい、アンタが原状をまったく分かってないお馬鹿さんってことはよーく分かったわ」 「よせやい、照れる」 「誉めてないわよ馬鹿。とにかく、相手は相手で本気なんだから死にたくなければ戦う。分かった?」 「……まだオレ闘うなんて言ってないんだけどな」 「――ッ、じゃあなんでデッキなんか持ってんのよ! 要らないんなら捨てればいいじゃない!」 ――ヤベッなんか急に不機嫌になりだした。 どうやら自分の感情に素直な人らしい。 それはそれで可愛げのひとつだが…あまりヒステリックになられるのもアレなので、理路整然と受け流すコトにしよう。 「――や、実際 何度か試したんだけど…どうにもコイツ、オレになついてんだよ?」 デッキを取り出し、示しながら応える。 「…なついてる?」 「あぁ、なんつーか…『アナタが私を捨てるなら、アナタを殺して私も死ぬ』的なヤンデレ思想。 直感ですが、デッキ捨てたらオレが死ぬ。頭からガッツリ行かれて逝く」 モンスターは人を喰う。それは先までの経験で分かった。 問題はソレが契約モンスターにもあてはまるということだ。 契約体にしてみれば、自分の餌を提供してくれる使用人を簡単に逃がす筈がない。逆に言えば…飯を作れない使用人に用は無い。 ライダーは彼らを使役しているつもりが、気がついたら彼らに使役されている。 神話で妖精の類いが人を惑わすのと同じ仕組みだ。 つまりアレだ、コイツらに餌あげねぇと自分も死ぬってこと。 ――救われないな、オレ。 「ちょっと待ってよ。じゃあ、あなたどうやってデッキを手に入れたの?」 「拾った」 「………」 ――視線が、『うわ、コイツ馬鹿だ』みたいな冷やかな眼差しが地味にイタい。 「……アンタ」 「ん?」 「今だけ同情してあげるわ」 「…サンクス」 気がついたら地雷踏んでるのはいつものことだ。 それはそれで救えない。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加