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「上手すぎるって…なにがよ?」
「ん、別に…。ただ、何でも叶うって言っちまえば大抵のやつはバトルに乗るよなーって。
案外、ただ殺し合わせるコトが目的なんじゃねーか?」
「……あのね、そんなことさせて何になるのよ?」
「……さて、分からんね。勘で言うなら……最後の一人の魂を頂く、とか?
理屈で言えば他の奴等より強い魂なわけだし、何かの役には立つんじゃね?」
一から十まで当てずっぽうな憶測に、彼女はさぞ呆れたように はぁ とため息をつく。
「もういい、アンタが原状をまったく分かってないお馬鹿さんってことはよーく分かったわ」
「よせやい、照れる」
「誉めてないわよ馬鹿。とにかく、相手は相手で本気なんだから死にたくなければ戦う。分かった?」
「……まだオレ闘うなんて言ってないんだけどな」
「――ッ、じゃあなんでデッキなんか持ってんのよ!
要らないんなら捨てればいいじゃない!」
――ヤベッなんか急に不機嫌になりだした。
どうやら自分の感情に素直な人らしい。
それはそれで可愛げのひとつだが…あまりヒステリックになられるのもアレなので、理路整然と受け流すコトにしよう。
「――や、実際 何度か試したんだけど…どうにもコイツ、オレになついてんだよ?」
デッキを取り出し、示しながら応える。
「…なついてる?」
「あぁ、なんつーか…『アナタが私を捨てるなら、アナタを殺して私も死ぬ』的なヤンデレ思想。
直感ですが、デッキ捨てたらオレが死ぬ。頭からガッツリ行かれて逝く」
モンスターは人を喰う。それは先までの経験で分かった。
問題はソレが契約モンスターにもあてはまるということだ。
契約体にしてみれば、自分の餌を提供してくれる使用人を簡単に逃がす筈がない。逆に言えば…飯を作れない使用人に用は無い。
ライダーは彼らを使役しているつもりが、気がついたら彼らに使役されている。
神話で妖精の類いが人を惑わすのと同じ仕組みだ。
つまりアレだ、コイツらに餌あげねぇと自分も死ぬってこと。
――救われないな、オレ。
「ちょっと待ってよ。じゃあ、あなたどうやってデッキを手に入れたの?」
「拾った」
「………」
――視線が、『うわ、コイツ馬鹿だ』みたいな冷やかな眼差しが地味にイタい。
「……アンタ」
「ん?」
「今だけ同情してあげるわ」
「…サンクス」
気がついたら地雷踏んでるのはいつものことだ。
それはそれで救えない。
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