5・闘志

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「な――ッ!!」 驚愕の表情を浮かべ、彼女は言葉を失う。 今更だが、自分で墓穴を更に掘り下げてしまったようだ。 「…んじゃ、オレはそーゆーことで」 「待ち…なさいよアンタ!」 一瞬の間。ドアへ向かう躰を取っ捕まれ、そのまま胸ぐらを掴まれる。 「どういう意味よ!!私がいつアンタに負けたって!?」 「――敗因が見えた、だから負ける。それだけだ」 「――ッ、何を……!!」 「…つまるところ、お前はこう言った。 ‘対等な立場で、フェアに戦う’と」 「そうよ、それがなに!?」 怒気をはらみながら、彼女はまっすぐにこちらを睨む。 胸ぐらを掴む腕にも力がこもり、ともすればそのまま握り殺さん勢いだ。 「…そんなんじゃオレを殺せない。仮にオレを殺せても、お前はこの殺し合いを勝ち抜くことは出来ない」 「―――ッ!!」 「履き違えるな。スポーツの試合か何かとでも思ってるのか? これはな…‘殺し合い’なんだよ。この力だって、ただの兵器に過ぎない。 それを知ってなお、フェアプレイだなんて綺麗事を言うのかお前は?」 「黙……ッ!!」 「なんでお前みたいなヤツがこんな闘いに加わるのか不思議だが……オレは止めないよ。ただ、生き残りたいならダーティプレイに徹することも覚えるんだな。 あまり気は進まないが……死にたがりを止める趣味は無い」 「黙り…なさい…!」 グッと胸元に籠る豪腕。怒りがそのままオレの胸ぐらを締め付ける。 「――黙るくらいは別に良いが…その後お前はどうする? オレがお前なら…この場で相手を絞め殺す」 「……ッ!」 「出来ないならとっとと降りろ。お前みたいな善人にはこんなくだらない茶番の主役は務まらん」 ――ダン。 地面が鳴り、叩きつけられた背中から鈍い音が響く。 「言ってくれるじゃない――アンタ!!」 未だ胸元からガッツリと抑え込んでる彼女は、抑えきれない怒りのまま言葉を紡ぐ。 「何も知らない癖にベラベラと…よっぽど死にたいのね!!」 「…オレにもいろいろある。が、それをお前が知る必要はない。説明したって分からんだろうし」 「この――ッ、いい加減その口を閉じなさい!!」 振り上がる片腕。 頭をよぎる一抹の嘲笑と諦めを前に、拳が振り降ろされると同時に―― ―――ガチャリ、 「………え?」 「あ、先輩」 ……来てはならない人が来てしまった。
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