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「な――ッ!!」
驚愕の表情を浮かべ、彼女は言葉を失う。
今更だが、自分で墓穴を更に掘り下げてしまったようだ。
「…んじゃ、オレはそーゆーことで」
「待ち…なさいよアンタ!」
一瞬の間。ドアへ向かう躰を取っ捕まれ、そのまま胸ぐらを掴まれる。
「どういう意味よ!!私がいつアンタに負けたって!?」
「――敗因が見えた、だから負ける。それだけだ」
「――ッ、何を……!!」
「…つまるところ、お前はこう言った。
‘対等な立場で、フェアに戦う’と」
「そうよ、それがなに!?」
怒気をはらみながら、彼女はまっすぐにこちらを睨む。
胸ぐらを掴む腕にも力がこもり、ともすればそのまま握り殺さん勢いだ。
「…そんなんじゃオレを殺せない。仮にオレを殺せても、お前はこの殺し合いを勝ち抜くことは出来ない」
「―――ッ!!」
「履き違えるな。スポーツの試合か何かとでも思ってるのか?
これはな…‘殺し合い’なんだよ。この力だって、ただの兵器に過ぎない。
それを知ってなお、フェアプレイだなんて綺麗事を言うのかお前は?」
「黙……ッ!!」
「なんでお前みたいなヤツがこんな闘いに加わるのか不思議だが……オレは止めないよ。ただ、生き残りたいならダーティプレイに徹することも覚えるんだな。
あまり気は進まないが……死にたがりを止める趣味は無い」
「黙り…なさい…!」
グッと胸元に籠る豪腕。怒りがそのままオレの胸ぐらを締め付ける。
「――黙るくらいは別に良いが…その後お前はどうする?
オレがお前なら…この場で相手を絞め殺す」
「……ッ!」
「出来ないならとっとと降りろ。お前みたいな善人にはこんなくだらない茶番の主役は務まらん」
――ダン。
地面が鳴り、叩きつけられた背中から鈍い音が響く。
「言ってくれるじゃない――アンタ!!」
未だ胸元からガッツリと抑え込んでる彼女は、抑えきれない怒りのまま言葉を紡ぐ。
「何も知らない癖にベラベラと…よっぽど死にたいのね!!」
「…オレにもいろいろある。が、それをお前が知る必要はない。説明したって分からんだろうし」
「この――ッ、いい加減その口を閉じなさい!!」
振り上がる片腕。
頭をよぎる一抹の嘲笑と諦めを前に、拳が振り降ろされると同時に――
―――ガチャリ、
「………え?」
「あ、先輩」
……来てはならない人が来てしまった。
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