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「…………」
「…………」
「…………」
人間とは突然の事態には上手く対応できないモノだ。
三者三様にフリーズしているなか、耶俥の脳は静かに活動を始める。
――さて、原状を軽く見直してみよう。
まず自分の身体はガッチリとロックされ地面に押し付けられている。目と鼻の先にある女の顔は、ただ止まった機械のように侵入者に向けられている。
おそらく、その侵入者たる妖魅衣織にとって彼女が何者なのかということはさほど大したことではないだろう。
だが問題なのは体勢だ。
先にある通り、自分の身体はこの女の身体ごと地面に押し付けられたカタチになっている。
それは、つまりアレだ……
事情を知らない者からすれば、二人だけの密室でその、なんだ……
……押し倒されたようにも、見えてしまうわけで。
「…………き」
「あー、先輩。待っ――」
「き、教授!!!教授ぅーーーー!!!!!」
爆発する激情、
先輩の妄想スイッチがフルスロットルで暴走開始である。
――つーか何故ソイツを呼ぶし!
「ど う し た い お り ん!!」
――何故 来たし。
てか早いなオイ。
「あ、あの…せッ、だッやぐッ…ら……ばぁ!!」
――駄目だこの先輩。
真っ赤っかでしどろもどろだよ。
「おろ?これはこれは……若いわねぇお二人さん。そこの子誰だか知らないけど…まぁいいや、可愛いし」
――先生、目がすげぇ笑ってる。解決する気ないな、絶対。
妥協のポイント間違ってるし、まぁ…可愛いのは認めるけど。
「あ、あのコレ…どうしたら!!」
「落ち着け いおりん。若い子にはよくあるコトよ。
ただ、お姉ちゃんとしては場所を選ばないのは如何なものかと」
「ぁああ、教授どうしましょう!!
私が、私がしっかりしてなかったから耶俥君がこんな非行に…!!」
「何を言うか!むしろ美味しい展開じゃないの!
よろしい、ヤってしまえ!私が許す!
うん…体勢的にはあの子は受け――」
「そそ、そんなこと言ってる場合じゃないですよぅ~!!」
限りなく論点がズレゆく論争のなか、当事者達は…
「…とりあえず一旦打ち切りで。まずはこの体勢なんとかしようか?」
「………そうね」
冷静に停戦協定。
なんだかんだで、結果的には乱入者二人に救われた耶俥誠司だったりするのだった。
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