5・闘志

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駐車場に早足で到着した西園寺は、そのまま自分のバイクのエンジンを入れる。 ――と、 「よう」 「!」 近づく人影に一瞬 身構えるも、 「…アンタか。何か用?」 「や、単に見送り」 「敵を相手に見送りなんて随分と暢気ね」 「そいつは済まなかった。 だが生憎、女性を対する心構えは調教済みでな。今ではこの通り、体から動く有り様だ」 敵意を持たない仕草を前に、西園寺も緊張を緩める。 「しかし…よく先生のコト知ってたな。 ここって有名大の姉妹大だからあんま実績は無いんだが。 えぇと…確かセイメイインっつったか…」 「あの人は有名よ。二十代にして物理学の教授にのし上がった天才。少なくとも、同じ部門じゃ知らない人はいないわ」 「……そういうのが好きなのか?」 「まさか。たまたま論文が面白かったから知ってただけ。 アンタこそどうなのよ?」 「…?」 「学問が好きってタイプには見えないわね。 アンタあの人の教え子?」 「違うよ。あの人はオレの雇い主で、笑顔で人を過労死させる疫病神だ。 そんで…オレの、恩人だ」 「――?」 一瞬だけ感慨深い表情を垣間見せた耶俥は、その直後にはいつもの…何も感じてないような仏頂面に戻っていた。 「まぁ、遊びに来るならいつでも来い。学食も美味いし、先輩くらいならいつでも相手してくれるだろうさ」 「――ッ、だから…私達は敵同士だって言ってるでしょ!!」 「……あ、そういえばそうだったな」 先のやり取りとは別人のような無神経な言葉に、怒りを通り越して呆れたような態度で応える。 「とにかく、次に会った時は今度こそ遠慮しないわよ! せいぜい会わないように祈ってることね!」 「……なんつーか、何処か負けフラグだぞ。それ」 「うるさいわね!ゴチャゴチャ言ってると今すぐシメるわよ!」 「…おぉ、怖い怖い」 降参 といった具合に両手を挙げる耶俥を一瞥した後、西園寺はヘルメットを被る。 エンジンを蒸かし、今にも走り去ろうとしたその時―― 「あー…ちょっと」 「……何よ?」 ――思えば 何故 このようなコトをしたのか、自分でもよく分からなかった。 「オレは耶俥。気が向いたら覚えといてくれ、西園寺」 「………」 まるで互いに初めて出会った子供のような、あどけない沈黙。 そして… 「……そう」 どこか優しさを含んだ言葉が、風に乗って届いた
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