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時刻は夕暮れ、
皆が足早に家路へと急ぐ中……
「―――暇」
……またか、と上司のボヤキに頭を抱える。
「暇って先生…朝置いてあった書類の山脈があったでしょう?」
「んなモンとっくに終わってるわよ」
「…マジ?」
確かまともにやって二日分くらいはあったと思うが…
「九分でいい」
――それは 流石に無理がある。
「…ハァ。なら帰れば良いでしょう。戸締まりなら生徒が帰った後にオレがやっときますから」
「おぉ、流石は私の部下!
見事な仕事と感心するが何処もおかしくはない」
「オレは別に強さをアッピルしているわけではない」
俗語に俗語で返すオレ。
まぁ、毎日のように無理矢理 教えられたらこうなるのも必然か。
「んじゃま、私は帰るわ。生徒達、サークルとかで夜まで長居すると思うけど…残業代欲しい?」
「くれるんなら貰います」
オーケイ、と快く返事する先生。珍しく財布の紐が緩んでるな……。
ていうか、収入がこの人の気分次第ってのはどうなんだ実際。
「いいわよ、百円くらい」
「やったぁ、駄菓子が買えるぜ……ってコラ、ガキのお使いかコラ」
「冗~談よ。ま、期待しときなさい。
夜更けまでゆっくりしていってね♪」
爽やかなデビルスマイルの後、先生は鞄を片手に教授室を後にしていった。
「…相変わらず、趣味を覗けば文句なしの人だよな。何処で人生のベクトル間違えたのかな………っと」
瞬間、朧気になりながら崩れる視界。
つんのめりかけ、近くの壁によりかかる。
「ぉお……ッ、いつものきた。慣れないねぇ、ホント…ッ」
血が足りないのは認めるが、いつ意識が飛ぶか分からないのが考えものだ。
「ぁ……ヤバ、今回は駄目だわ…」
ソファに寄りかかった瞬間、睡魔とは似て非なる意識の断絶に包まれた。
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