6・来集

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「――へぇ。顔が割れてるから用心くらいはすると思ったけど、意外と呑気ねあなた。 ちょっと頭にくるわ」 彼女の口元に微笑が浮かぶ。だが瞳は笑みよりむしろ敵意を持って こちらに刃物のような視線を向けている。 ――おぉ、怖い怖い。 「西園寺、女性がこんな時間に独り歩きするのは感心しませんな。夜這いなら場所を選びなよ」 「馬鹿。誰がそんなこと…」 「ストーカー紛いなら一回したけどな」 「…………」 ―キィイイイイイン― 「うぉッ!!」 反響音が響き渡る真横の壁に浮かび上がる、飼い主と同じく敵意を走らせる怪物。 「――了解。自重するから横の‘コレ’なんとかしてくれ」 「もちろん、不意打ちなんてしないわ。ライダーとして、真っ向から叩き潰してあげる」 …この文明社会にまさかの決闘ごとか。 この学校のセキュリティが少々 不安になったぞ。 「――ッと」 一瞬、グラリと傾く視界。前につんのめる躰を壁に手を掛けて持ちこたえた。 「――?アンタ…」 「や、何…気にするな。 ただの貧血だよ。慢性的…のな」 「………」 興味がない、という感じに西園寺は視線を反らす。どこか取り繕った様にも見えたが、そんな些細なことを気にしている場合ではない。 「さて…と」 一歩、また一歩と秒読みじみた雰囲気をかもしだす西園寺。 一刻一刻と猶予ない状況のなか、革ジャンの中にしまい込んだデッキに手を伸ばす。 コイツはこうやって身につけているだけで、何か魅惑のようなモノを漂わせる。 これが‘力’なんだろう。 持っているだけで『俺を使え』と頭ん中で騒ぎ立てやがる。 ホント…鬱陶しいことこの上ない。 だけどまぁ… 「…そんな気遣いは、要らないか」 笑う、口元が抑えきれない衝動に吊り上がる。 「仕掛けてきたのは、お前だもんなぁ…」 「へぇ、ようやくやる気になったわけ? 上等よ…さぁ、始めましょうか」 西園寺がコートからデッキを取り出す。 既に間合いは一触即発。 あと一歩、彼女が踏み込めば その瞬間 闘争は始まるだろう。 そして、西園寺がゆっくりと、その間合いに踏み込―― 「――だが断る!!」 ―キィイイイイイン― 「――!!」
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