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「はぁああッ!!」
敵意剥き出しで迫る数トンの鉄塊。
振りかぶる挙動を見切ってギリギリでかわす。
「――丸腰じゃあキツいで…しょう!!」
詰まった距離から右脚を、押し出すように蹴りつける。
「――ッこの!」
ガイが僅かに後退した隙を逃さずバックルからカードを抜く。
「援軍のお出ましだ…」
『ーAdventー』
機械音が鳴り、地面を駆けるサイコローグを見てひとまず安堵。
だが……
「甘いわね」
「……まさか」
『ーConfine ventー』
ガイがカードを器用に肩のバイザーに投げ入れた瞬間、サイコローグの姿はノイズを放ちながら消滅した。
「悪いけど、このカードは一枚だけじゃないのよ」
「複数所持か…汚いなさすがお前きたない」
「うるさいわね!
戦略よ戦略」
「カード使っただけじゃ戦略とは呼ばん」
「あぁーーもうっ!!口ばっか減らない奴ねアンタは!!
いいからさっさと倒されなさい!!」
――ヤベ、とうとうキレた。
「うおっと、よせよせ!
話せば分かる!多分…」
ガイが怒り心頭のまま右腕のメタルホーンをブン回す。
「これは…ッ、キツいね」
右に左に、まるで刃物のような敵意が空を裂き続ける。
おそらく食らえば致命傷だ。だが、おそらく西園寺は今、自分の武器だけに意識を向けているに違いない。
ここはひとつ、右腕だけに細心の注意を払って対処するべきである……
――ガシッ
「………あ」
――瞬間、こちらの右肩を抑える相手をの左腕を見ながら、致命的なミスをしたことに気付いた。
「掛かったわね…」
先ほどまでとは打って変わって落ち着いた彼女の声の直後――
――ドン 、 と腹に響く衝撃。
「――ッ、ガッ!!」
痛みより全身に響く振動に肢体の動きが止まる。
――ゴン
「グ……ハッ!!」
腹にトンネルが開通したかのように突き抜ける衝撃。
突き刺すような激痛に、耐えきれずに身体が崩れ落ちる。
「もう終わりかしら?
案外呆気ないわねアンタ……」
「……甘い」
「――ッ!!」
地面スレスレから腕の力だけで跳ね上がり、同時に腰を捻り片脚を大きく振り回す。
――ブォン
「――ッ!」
間一髪でガイが身を屈め、頭部を狙った一撃は空を裂くだけで終わった。
「…ホンット、ついてないな」
ぐらつく意識の中、他人事のようにそう呟いた。
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