6・来集

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ドン、と地面が鳴り、ガイの鎧が一直線にこちらに牙を向く。 「速ッ――堅くて速いとか反則だろ!」 避ける間もなし、 気づくや否や両腕を広げ脚を沈める。 「せいぃッ!!!」 ゴン と二つの鎧がぶつかり、一瞬息が止まるような衝撃に襲われる。 「捉えた…が、次の手はどうするよ?」 互いに組み合った状況で目の前の相手に言葉を投げ掛ける。 相手の出方を伺うように見えてその実、ただ何の戦略も思い浮かばなかった故の時間稼ぎに過ぎなかった。 「…………」 その時、奇妙な違和感を感じた。 両腕だけで組み合っているガイの上体が、さりげなく下へ下へと沈んでいく。 まるで相手の懐へ潜り込むように…… 「――ヤバッ!!」 気付いた時には―― 「――ぁぁぁああああああああああ!!!!!!」 眼前の鎧が、敵意を爆発させるような咆哮を上げていた。 地面を踏みしめ、地鳴りを轟かせガイの躰が砲弾のように弾け飛ぶ。 ――誓っていい、この時オレは力を緩めてなどいない。 ブン と重力の柵から解き放たれたように躰が宙に浮かぶ。 掬いあげられた、しかも使われたのは純粋なパワーのみである。 「食らいなさい…!!!」 天を穿つような一撃、 ――これは駄目だな。 地面を仰ぎながら、無重力の不便さを知る。 同時に…… ――ガン 「――ッア」 声とも呼べない嗚咽と共に、自分の躰が吹き飛ぶ感覚を感じた。 天を仰いだのが一瞬、 地面に叩きつけられたのも一瞬、 コンクリートを粉砕し、派手に火花を散らしながら地面を転がる。 そして、数瞬間をおいて――ソイツは現れる。 「ぐぅ――ぁッ!!」 痛み。 電撃を流されたかのような信号の悲鳴。 虚脱。 意識を奪い去る脳の誤作動が視界を歪ませ、正常な認識を奪い去る。 疲労しきった身体が、理論のみで構築された肉体が、宿主の抵抗を阻害する。 まともには動ける。だがそれだけの話だ。 スピードもパワーもスタミナも半分以下にまで低下し、勝算もクソもあったものではない。 「終わりね。もうあなたの勝ちはないわ」 地面に伏す敵を睨みながらガイは歩みを進める。 「素直に負けを認めなさい。そうすれば――」 彼女の言葉が、ボヤけた頭の中に刻まれる。 そして――その時、彼女ははっきりと… 「もうあなた…死んじゃうわよ?」 はっきりと、そう言った
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