47人が本棚に入れています
本棚に追加
オルタナティブ・ゼロは動かない。
地面に突っ伏したまま、反撃に移す様子は見られない。
「ふん……」
意外と呆気ない、安堵にも似たため息を溢し、ガイの鎧を纏った西園寺は力みすぎた全身の緊張を――
「――緩めるなよ、力をよ。死ぬぜ、お前…」
「え……?」
タン、と軽い音。
ステップを踏むような跳躍は、殺意を混じらせたナニカへと 姿を変えた。
――――ガァン
「――ッ!!」
視界から消失した黒い影は直後、刃物のように鋭い烈蹴をガイの鎧に目掛けて叩き込んだ。
突然の奇襲、かろうじてメタルホーンで受け止めた西園寺。
「こいつ――ッ!!」
「…ど真ん中」
「え…?」
グルリ と回りながら地面に着地したオルタナティブは、着地の衝撃を殺すことなく身を屈め――
「…痛いぜ?」
「な――ッ!?」
ドン
「ぐッ!!」
直後、胸元を貫かれる衝撃がガイを襲う。
オルタナティブ・ゼロが放った両足によるドロップキック。
レスリングの試合でも通用しそうなフォームで叩き込みながら、そのままグルリと着地する。
「プロレスなんて八百長の塊、なんて聞くが…どうだ、なかなか効くだろ?」
「アンタ…!」
「……いきり立つなよ、殺意なんか邪魔なだけだぜ?」
「…何ですって?」
「――殺し合いに余計なものを持ち込むな、てことだ」
耶俥が妖しく笑う。
月の光を浴びながら、夜闇に佇む漆黒の鎧が幽汽のように立ちはだかる。
「何…を…?」
「――何ってお前、オレを殺す気なんだろ?」
‘殺す’
その言葉に、西園寺は静かな憤りをたぎらせる。
だが…
「もしお前がそのつもりなら…オレは死ぬ気で抵抗させてもらおう。
だから…お前もその気で来い」
「…え?」
「こんな‘死ぬほど痛い’程度の攻撃じゃ、オレの命にゃ届かない。
確実に‘殺せる’ぐらいの攻撃じゃなきゃな…」
何も変わらない。
特別に敵意や殺意を抱いたような素振りもなく――
「それで…殺し合いがご所望かい、ライダー?」
「――ッ!!!」
西園寺の背筋を駆け抜ける旋律。
本気だ…。
目の前の男は、本気で命を賭けた殺し合いをするつもりだ。
それはもう…戦いでは収まらない凄惨な結果を生むだろう。
だが…
「……上等よ」
生き残るために…退くことはできない。
西園寺と耶俥、両者が今 まさに 地面を蹴ろうとした瞬間――
『ーAdventー』
「「――!?」」
最初のコメントを投稿しよう!