6・来集

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瞬間、弾け飛ぶ朱い悪意。 地を這い風を切る一閃。 「――ッ、西園寺 前! 間違えた後ろ!!」 「え…?」 振り返るのが遅かった―――否、‘ソレ’が速すぎた。 ―――ドン 「な…ッ!!」 ガイの鎧を背後から、闇夜を引き裂く朱いナニカが叩き込まれた。 ソレ はそのまま速度を失わず、巻き込んだガイの躰を容赦なく弾き飛ばす。 「――ッ、きゃっ!!!」 そのまま受け身も取れず、ガイの躰は激しくコンクリートに叩きつけられた。 「ったく、何だよ今度は…」 地面に倒れ込む彼女に駆け寄りながら辺りを見渡す。 先の朱いナニカは気がついたら視界から消え失せており、今現在、闇夜が広がるこの鏡面世界に自分達以外に動く物体は―― 『ーSwing ventー』 いた。いつの間にか眼前に現れた、朱い鎧。 瞬時に現れた鞭っぽい武器を構えるソイツの周りに、先ほどの一撃を放ったナニカが降り立つ。 「……エイ、だな」 エイだ。平べったい躰に広げたヒレと先端の尾。 ――それにしても、まさかのエイ。いや、コオロギの自分が言えた 義理でもないか。 「一応聞くけど……お前、何?」 とりあえず、まずは一声。 人間 話し合いで譲歩出来ない問題は無いわけだし… 「――ハハハ、敵を前に随分と呑気なことだね、君は。 まぁいい。本来なら君のような凡人に名乗る名は無いが、冥土の土産に憶えておいてくれたまえ。 ‘ライア’、それが僕に授けられた力――」 「………」 ――長い、ウゼェ、帰りたい。 まるで自分に酔ったようなソイツ…ライアを前に冷めつつも身構える。 何だかんだで敵意も感じるし、何よりコッチは先の戦いのダメージが多い。 「…謀られたか」 多分、漁夫の利を狙われたようだ。 どっちにしても、この場から逃げることを考えた方が良い。 「おい立て、西園寺。逃げ……」 地面に倒れ込むガイを見やり、一瞬 身が凍る。 「………」 「もしも~し?」 「………」 「……うわぁ」 気絶してる。 どうやら派手に頭を打ったらしい。 「まったく…いい加減にしろよ。ホント、付き合ってられないな」 鞭を構えるライア。敗色は濃厚。 よって、今もっとも有効な判断は… 「…悪く思うなよ。ま、恨まれる義理は、無ぇがな」 地面に倒れ込むガイを見下ろしながら、淡々とそう呟いた。
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