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そうこうしているうちに私の家の近くまで来た。
「もう家はすぐそこだからここまででいいよ」
そしたら、彼からとんでもないことを聞いた。
「あの、俺、ここからの帰り道分からないです」
「…………え?」
う~ん、これはどうしたものか。
「今まで歩いて来た道を辿っても無理?」
「いつもなら歩いて来た道を覚えてるんですけど、今日は話に夢中になってたので……」
ダメだこりゃ。
私の家の付近の大通りはよっぽど遠いところに住んでる子以外は分かりやすい道なんだけどな。
「たぶん、帰れると思います」
そう言って笑う彼に私は、
『本当かなぁ…』
と、とても不安でならなかった。
とりあえず、彼が迷子になっても大丈夫なよう、電話番号も教えておくことにした。
「じゃあ、ケー番教えとくから、もし分からなくなったら電話して?」
「ありがとうございますっ」
涼はとても嬉しそうに笑った。
でも、本当は喜んでる場合じゃないと思うけどね。
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