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「ウチさ、母さんとあんまり仲良くないんだよね。すぐぶつかるから。それとね…──」
私は物心つく前に父親が女を作って出て行ったこと。
母子家庭で、しかも母も仕事ばかりで夜も一人で寝ることがほとんどで、構って貰えなかったという寂しさ。
再婚したら今度は暴力癖がついたこと。
その度に義父が止めていたこと。
その家族の問題とイジメに追い詰められ中2の時に学校の3階から飛び下りて自殺未遂を図ったこと。
今は一人でいることも殴られることもないけれど、未だに母を受け入れられないこと。
こんな話をしたら引かれるかなと思っていたけど、涼は最後まで聞いてくれた。
そして、涼からも癒えない傷を、痛みを、過去を聞くことになる。
「先輩の気持ちよく分かりますよ。俺も似たような経験してるから」
「えっ?」
私は耳を疑った。
彼も私と似たような経験を?
とてもそんな風には見えない。
その辺のチャラチャラした高校生と違って、真面目でとても優しそうな子だったから。
だからこんな子が家族と上手くいってないということが信じられなかった。
「俺も父親から昔、暴力受けていたんです。今はそういうことはないけれど、やっぱりまだ受け入れられないんです」
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