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「本名、田中雄二(たなかゆうじ)、二月生まれの魚座で、性格は優しくて好い人と良く言われるが、それは無個性の強調であり、その実、優柔不断で飽き性。学歴は大学まで進むもの、クラスと馴染めずバイトに明け暮れ離脱。その後大学を辞め、今に至る。典型的なニート。社会の負け組」
つらつらと、平坦な調子で、尚且つ最後に毒まで付けて少女はそんな戯言を吐きやがった。
声が出ない。社会の負け組云々はともかく、今述べたセリフそのものが、当てはまるのだ。男の額に、嫌な汗が流れ引きつった笑いが覗く。
「良く調べたみたいだな……誰のガキだ? 一之瀬か? 間宮か?」
少女は男の言う事に対し、訳が分からないと言った様子で。
「貴方の言うどれもに私の存在は当てはまらず、更に言えば私は貴方の知る人とは関わりを持たない」
どう言う事かが全く分からない。つまり、どう言う事だ?
「お前は一体、何者だ?」
困惑して男は尋ねる。すると少女はなぜか自身有り気な風体を装って、胸を叩き背伸びして宣言した。
「先程申した筈ですが、もしや聞いておりませんでしたか? いえ、元々聞く耳を持ち合わせてはおりませんでしたね。仕方ありません。では、もう一度申しましょう。貴方に機会(チャンス)を与える為、私は参りました。私は猿の手、悪魔です。貴方が望むなら手を貸しましょう」と。
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