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序、きっかけ
押し入れを整理していると懐かしい本が出てきて思わず作業する手が止まった。
曰く、それを手にした物は三つの願いを叶える事が出来る。
だがそれは意に則した形で起こるとは限らない。
ま、良くあるおとぎ話の類だ。
「猿の手、ね。んな物が本当にあったらどれだけ嬉しいか……っと、いっけねー遅れちまう!」
慌てて読みかけだった本をそこら辺に放り投げると、男、青年は早々に支度を始める。
いつもの錠剤を水と一緒に飲み干すと喉の奥でそれがごろ、と嚥下(えんか)した。ごくりと唾と一緒に飲み込みコップをトレイに置き、帽子を控えめに被り髪を中にしまい込んで……。
「さて、行くとすっか!」
男はもう馴染んだアパートを元気良く、たったった、と外に飛び出したのだった。
外はうだるような真夏日が広がっていた。
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