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だから、というわけではないが、今日はできるだけこのままでいようと思った。
拒絶しないことで、この小さな少女に安心をあげられるように。
自分の思いが、少しでも伝わるように。
日が落ち、部屋の明かりをつけた頃。
真由が不意に呟いた。
「やっと付き合い始めたね、詩織と律」
見上げる顔は本当に幸せそうで、見てるほうが幸せになる。
拓也はふぅと息を吐く。
「ホントだな。好きなら好きってはっきり言えばいいのに」
「二人ともツンデレだからしょうがないよ。ていうか、素直だったらいじり甲斐がないし」
「確かに。一日一回は律の不機嫌な面拝まないと俺無理」
「あたしもぉ。詩織が困ってる顔って、なんかそそられるんだよね~」
二人は嬉しそうに親友への嫌がらせを口にし、満足いくまで語りだした。
いつも以上に活き活きとした顔には、親友たちへの祝福が刻まれていた。
寄り添う二つの体。
影で親友を支える彼らも、こうしてお互いを支え合っているのだ。
いつどんな時でも、心の一番奥に秘めた想いが輝いていられるように。
この単なる出逢いを、運命と呼べるように──
END
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